市長が暴挙 公立保育園廃園条例を専決処分

2020.10.1 東京新聞 多摩武蔵野版

9/29決算特別委員会1日目の昼休み、市長が公立保育園廃園条例を専決処分したとの一報が入り、少数会派の大部屋に激震が走りました。議会の議決をぶっ飛ばして市長の権限で保育園の廃園条例を制定したのです。議員には事後報告です。厚生文教委員会で継続審議と参考人聴取が決定していたところに、まさかの強硬手段。にわかには信じられない事態です。

決算特別委員会は休憩のまま開かれず、翌日の9/30全員協議会が開かれ、市長から専決処分についての説明がありました。

「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に当たるのか

専決処分は地方自治法179条に定められている長の権限です。要件のうち「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に当たると市は判断したと説明していますが、適正なのでしょうか? 専決処分は災害など緊急事態で市民サービスが停滞することを防ぐために執行されることが通例で、「議会の議決事件(自治法96)を奪うという極めて例外的なもの」と地方自治に詳しい江藤俊昭氏(大正大学社会共生学部教授)は記しています。議会NAVI2020.4.10

全員協議会の質疑で、市民ニーズのある公共施設を廃止することに適応されたことは、全国においても例がないのではないか、例があるなら示してほしいという議員の質問に、現時点で例は確認できないと総務部長が答弁しました。また、千葉県白井市の専決処分が違法だとする判例を読んだのかという質問に、市長は読んでいないと明らかにしました。

また、9/283時間にわたり行われたという庁議でどのような意見が出たのかについて、子ども家庭部長のメモが共有されました。法的に問題はないのかは、顧問弁護士に確認し執行部で判断したと答弁。庁内でも専決処分について職員から懸念の声が上がり、今後の議会との関係や行政運営に不安を抱く声が上がっていたことが分かります。それでもなお、専決処分という強行手段に出たのは、今定例会での議決をお願いしてきた中で、専決処分という方法を用いざるを得なかった、と市長は主張しています。

議案には議決期限があるのか

「議案には議決期限がある」と市長は何度も発言しますが、議案に議決しなければならない期限というものがあるのでしょうか? 今回出された「市立保育園条例の一部を改正する条例」には条例施行期日が202341日と定められ、202210月初旬に発行する保育所案内に廃園計画を掲載するためには、9月議会で議決を得る必要がありますが、あくまで行政の都合です。このことをもって「期限があるのに議会が議決しない」と断じ専決処分としたことは、議会軽視も甚だしいと言わざるを得ません。

今後の議会運営にも大きく影響

全員協議会では「市長と同じ空気を吸いたくない」とまで発言する議員もいるなど、議会と市長部局の関係が悪化した今回の専決処分。決算特別委員会の日程が全部飛び、今後予定されている小学校の建て替えに関する全員協議会や、新庁舎建設の協議会なども開催できるか不透明です。生活者ネットワークとしても議会との信頼関係をぶち壊す市長の暴挙に「これはこれ、それはそれ」として他の議事を進めることはできません。議会と市長の関係が悪化することでの議会運営が滞り、今後市民サービスに影響がでかねません。専決処分を強行した市長に大義はあるのか。私はないと思います。