私たちの水は安全? PFAS(有機フッ素化合物)地下水汚染 学習会を開催しました

講師の根木山幸夫さん

2023年3月17日(金)、小金井 宮地楽器ホール小ホールで、多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会の根木山幸夫さんを講師に、学習会を開催しました。参加者はスタッフ入れて55名、平日の夜でしたが多くの方にご来場いただきました。〈主催:小金井の水連絡会、小金井・生活者ネットワーク、環境NPOエコメッセ小金井〉

まずはPFASのことを知るために映像「化学物質“水汚染”リスクとどう向き合うか(2019年)」と「見えない侵入者〜米軍基地から漏れ出す永遠の化合物(2021年)」を鑑賞後、根木山さんから現在の状況を説明していただきました。

PFAS汚染は世界的な問題であり、主に軍事基地と化学工場等が汚染源となっている。米国では健康被害が認定され賠償も行われ、バイデン政権になって一層厳しい規制がなされている。2022年6月、米国環境局(EPA)はそれまで70ng/Lと定めていた生涯健康勧告値を、3000倍厳しい値に改めた(PFOS:0.02 ng/L  PFOA:0.004 ng/L)。日本では2020年にやっと暫定目標値を50ng/Lとした。3月14日、EPAは法的拘束力のある基準値を4ng/Lとする案を公表。日本の厚労省と環境省は正式な目標値設定に向け現在、国内外の情報を収集しており、今後の検討に影響を与える可能性がある。

多摩地域では飲料水の多くを井戸水から取水してきたが、2020年に報道で汚染が明らかになり、当時の米勧告値の半分35ng/Lを超えた水道水源井戸の取水を停止した。2023年1月報道によると、11箇所の浄水施設で34本の井戸が取水を停止している。2022年市民グループ「多摩地域の有機フッ素化合物を明らかにする会」が発足され、京都大学の原田浩二教授らとともに汚染地域住民の血液検査を行なった。2023年1月、血液検査結果の中間報告で、血中濃度が米国基準値を超えた住民は約85%にのぼり、健康被害への懸念が広がっている。

質疑応答では、市民からの質問が次々と出され、関心の高さが示されました。参加者からは「PFASは加熱したら無くなるのか」「家庭でできる対策は」「浄水器を使ったほうがいいか」「風呂で皮膚から吸収するのか」など水の取り扱いに関する質問が相次ぎました。ちなみに加熱しても無くなることはなく、皮膚からの吸収の可能性も低いとのことです。浄水器については個人宅でどれくらい除去できるか定かではなく、沖縄で実施されているように行政が責任を持って浄水場で除去するべきです。東京都は現在、水道水に関しては問題ないとしていますが、最新の米基準値(案)4ng/Lを当てはめると、安心な数値であると断言は出来ません。

司会は小金井の水連絡会の山内美穂さん

参加者の質問にも熱が入る

汚染をどう捉えるか、基準値はどのような指標で設定するのか。国の基準が定まらず、被害がわからない段階では、予防原則にしたがって可能な限り暴露を避けることが望ましいと言えます。生活者ネットはじめ複数の議員が、地域にある井戸を測定することを市に求めていますが、市としての知見はないため、国や都の動向を注視するという答弁に終始しています。

市民から出された「有機フッ素化合物(PFAS)への市民の不安を解消するための早急な対策を求める陳情書」は、3/7建設環境委員会で残念ながら不採択となりました。生活者ネットおよび共産党で提案している「有機フッ素化合物(PFAS)による地下⽔汚染から国⺠の健康を守る取り組みを求める意⾒書」は、3/24本会議で採決されます。可決され、国や都の抜本的な対策が進むことを強く望みます。

 

有機フッ素化合物(PFAS)による地下水汚染から国民の健康を守る取り組みを求める意見書(案)

多摩地域で水道水に使われる井戸水から、発がん性や胎児への影響などの健康被害が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)が広範囲で検出されたことが明らかになっている。

本年1月3日の東京新聞で、7市の11浄水施設で井戸34本がPFAS汚染により取水を停止していることが報じられた。東京都水道局は、水道水においては暫定目標値(PFOS+PFOA:50 ng/ℓ)を下回っているため問題はないとしているが、米環境保護局の飲料水の生涯健康勧告値(PFOS:0.02 ng/ℓ、PFOA:0.004 ng/ℓ)の3000倍と高く、生涯の健康被害を想定しておらず安心できる状況ではない。

欧州環境機関はPFASの健康被害について、甲状腺疾患、血中コレステロール値の上昇、肝疾患、腎臓がん、前立腺がん、胎児の免疫力の低下、低出生体重について影響を認めている。米大学研究チームは妊婦への調査結果から、血中のPFAS濃度が高い人は新型コロナウイルス感染後の抗体価が低い傾向にあり、PFAS が免疫獲得に影響があると指摘している。

PFASは半導体製造や泡消火剤などに幅広く用いられてきたが、米国では製造元の化学メーカーや軍事基地周辺の汚染が明らかになり、ストックホルム条約でPFOSとPFOAの製造と使用が禁止されたが、米軍は保有・使用をやめず、世界中の米軍基地で泡消火剤を火災消化訓練に使用し続けた。沖縄県宜野湾市の普天間基地周辺では湧水・地下水が高濃度に汚染され、多摩地域の米軍横田基地では2010年から2017年にかけて泡消火剤の大量漏出が明らかになっている。本年1月には、市民団体による多摩地域住民の血液検査で米国の指標値を超えた住民は85%にのぼったと報じられ、市民に不安が広がっている。

環境中で分解せず体内に蓄積するPFASの特性から、長期間にわたる体内摂取が健康に与える影響を軽く考えることは出来ない。国および東京都は、市民の生命と健康を守るための措置を速やかに行うべきである。よって小金井市議会は、政府および東京都に対し、以下の事項を強く求めるものである。

  • 生涯にわたり健康影響がないよう、飲用水のPFAS暫定目標値の見直しを行うこと
  • PFASの汚染源を明らかにし、汚染拡散防止と地下水源の浄化を行うこと
  • 汚染地域住民のPFAS血中濃度の疫学的調査を行い、調査結果を公表すること

安田から市議会の動きや小金井市の汚染状況などについて説明

今回の学習会では、市民の方の危機感が伝わってきました。議会の一般質問や委員会審査などで市としての対応を求めても、市は自主的な検査はしないとの立場を崩しません。小金井市の地下水および湧水を保全する条例第14条では、「地下水及びゆう水の汚染(以下「地下水汚染」という。)のおそれがあると明らかに認められるときは、速やかにその汚染防止のための措置を講ずるよう努めなければならない」とあります。上水南浄水所での汚染は明らかであり、その他の水源(災害対策用井戸、農業用井戸など)についても汚染の実態をまずは把握することが必要ではないでしょうか。国や都の動向を見守りたい市と、一刻も早い対応を求める市民の間の意識のギャップの大きさを感じます。

市民の不安に寄り添い、命と健康を守るための取り組みを推進するには、市民の関心が行政に伝わることが大事です。6月には血液検査の結果が公表される見込みです。引き続き皆さんとともに声をあげていきます。