都市計画道路の市民説明会、各会場で紛糾

小金井市主催の都市計画道路に関する市民説明会が8月2日から5日間、5会場で開かれ、全ての回に出席しました。総括的に報告します。

説明会は2部制となっており、第1部は「市施行路線」候補路線選定のための検証について、第2部は「都施行」の優先整備路線に関する経緯について、それぞれ資料を示しながら部局の説明の後、質疑応答が行われました。

初日の冒頭、参加した市民から、録音録画や資料についてなど運営に関する様々な意見が出て紛糾。また、今年6月に市がHPに掲載した「都市計画道路に関する検証報告書まとめ」資料は、議会で説明されていないことが判明。「議会で説明していない内容を市民説明会で説明するのか」と市民から抗議の声が上がりました。一定整理し議事が進められましたが、質疑応答の時間が足りず、「説明会は終わっていない」という結論になり、別の機会を設けることを市長が約束しました。

第1部 市施行の優先的に整備する都市計画道路の候補路線選定のための検証および調査について

市施行の優先的に整備する路線を選定するための検証および調査について各項目ごとに説明。19の評価指標を設定し、将来交通量推計、概算事業費などを評価しまとめた図が示されました。
資料1(第1部説明資料)  資料2 指標に基づく評価

評価の指標について市民からは、「整備を推進するための指標項目になっている。整備したときのデメリットについて検証しないのはおかしい」との根本的な疑問が出されました。各項目ごとの説明には、「指標4 交通処理機能の確保というが、2030年までに30%増えることが前提となっている交通量将来予測を根拠としていることはおかしい。交通センサスでは交通量は減っている」「指標5 救急医療施設へのアクセス向上とあるが、差は数分であり誤差の範囲だ。救急搬送を受け入れられる医療体制の充実こそ図られるべき」「指標7 避難場所へのアクセス向上とあるが、避難は徒歩が原則ではないか」「指標9 良好な都市空間の創出とあるが、道路整備により、みどりが破壊されることが考慮されていない」「指標13 災害時の代替機能において、土砂災害特別警戒区域に接する341号線、3411号線は代替とはならない」「指標14 都市の多彩な魅力の演出・発信として、てくてくマップに記載されている観光拠点へアクセス向上とある。道路が整備されれば観光拠点であるはけの小径や名勝小金井(サクラ)は損なわれることが考慮されていない」など、指標に対しての疑問が次々に寄せられました。

指標を元にした評価では◯を1点、△が0.5点とし、評価取りまとめは下記の通りです。この第1次検証はコンサルティング会社に委託して行われたものです。

この検証は「市施行の優先的に整備する路線を選定するため」と説明されていますが、市内の未着手路線すべてを対象としており、優先整備2路線(小金井341号線、3411号線)を含む都施行路線も含まれています。19項目に照らした評価のランキングでは、3411号線、341号線、316号線がAランク(15位)となっていますが、いずれも都施行路線です。

Aランクとされた316号線は五日市街道であり、昨年100周年を迎えた玉川上水沿いの名勝小金井(サクラ)を含んだ幅員45メートルから49メートルの都市計画道路です。説明会では、このようなランクづけを示すことで、小金井市は五日市街道の拡幅を積極的に推進しているような印象を与えるとの懸念の声が出されました。

実際に、令和4年に策定した小金井市都市計画マスタープランP36には、広域幹線道路の整備として、五日市街道は「東京都に整備推進を要望します」と明記されています。しかし、文化遺産である名勝小金井(サクラ)への影響も不明であり、沿線住民への説明もなく、現時点で市として都に整備を要望する段階にあるとはとても言えません。

市民からの拡幅による名勝小金井(サクラ)への影響についての質問に市は、玉川上水下流の千川上水を挟んだ道路整備を例に上げ、文化遺産との共存もあり得ることを示唆しました。

アンケート調査結果について

市民が市内の道路にどのような問題点を感じているか等を調査し、優先的に整備する市施行路線の選定の参考にするために行なったアンケート結果についても報告されました。説明会初日に参加者から、アンケートの自由意見欄を資料として配布してほしいとの意見が出され、2日目以降の資料に追加されました。詳細はこちらアンケート調査集計結果でご確認ください

アンケート結果によると、現状の道路状況への満足度が低い地域として貫井南町が上がっています。自由記述欄に寄せられた意見は様々ですが、総じて、新しい道路を整備することを求める意見よりも、生活道路を含めた現存する道路の拡幅または適正な整備を求める声が多く見受けられます。

全ての会場で時間延長しても第1部の質疑応答が終わらず、第2部の説明後の質疑応答で第1部の質問も受け付ける、という整理となり、休憩後に第2部が開始されました。

2部 都施行の優先整備路線に係るこの間の経緯と現時点の市の状況について

冒頭、市長から、公約通りの結論に至らなかったことに対し謝罪の言葉が述べられ、今後の対応については第3定例会(91日初日)で説明する、としました。部局からは都市計画道路の独自検証について説明がありました。資料4 第2部 都施行の優先整備路線に係るこの間の経緯と現時点の市の状況について

初日、東小学校での開催には、自然環境への影響について専門家として市長に見解を示した生物学者の高槻成紀先生が参加され、発言されました。「報告書は全く評価できない。自然への影響は限定的などと記されているが、何の根拠もない。例えばキンランは移植できない。見直すべき。自然を守る先人たちのリレーのバトンを持っているのは市長です。公約を果たしてほしい」といった内容でした。

白井市長から高槻先生にお詫びの言葉のあと、「野川、はけを守りたいという思いは今でも変わらない。検証し、3411号線は防災等の観点で必要性が高いという結果となった。色々な分野の方と話す中で、道路のことを考えてきた。地形的なことなど状況は全く違うが、能登半島地震が起きたことも大きかった。3.6kmにわたり南北道路がないことは小金井市のネックになっている。市民の安全を守るために中長期的な視点が必要。積極的に進める気持ちにはなれないが、どうやって自然環境を守っていくのか、考えていきたい」との主旨の発言でした。

「検証の中身に市長は関与していないというが、人任せにする態度がおかしい。自然環境への影響に照らしてどうか、という検証が最も必要なことだ。総合的に判断したものが必要」

「市長は市民と約束をしたのに、信頼を壊した。まだ続けるのか。この後何を言ってもだめです。言葉に対する信用を壊しておいて、何かを言う資格はない。辞めてほしい」

「道路が通れば良いと思っていたが、交通量減少する中で税金をかけて建てるほどの必要性があると思えない。市長は公約を守れないなら出直すべき」

市長に対しては全ての会場で次々に厳しい発言が続きました。「道路を止められるのは市長である白井さんだけだ。辞めないで公約を守れるよう支えたい」といった発言もありました。白井市長を支持してきた多くの人にとって、「都市計画道路優先整備2路線は中止を都に要望する」と明言していた白井市長が、なぜ、いつの段階で考えを変えたのか、考えを変えるくらいだから何か決定的な出来事があったのではないか、検証すると決めた時から結論は出ていたのではないか。といった点を問う質問が多く出ました。しかし、白井市長の回答は、市民が納得できるほどの具体性はなく、説得力に欠けていたと言わざるを得ません。

市民からは、「2路線についての市民意向アンケートを取って民意をはかったらどうか」「市長発議で住民投票をやったらどうか」といった提案もありました。どちらについても「現時点でその予定はない」との答弁でした。

資料は1から7まで、追加資料を入れると8種類あり膨大。すべて市ホームページにアップされている

どの会場でも市長に対する質問は途切れることなく、質問者は説明会初参加で初めて質問する人に限られるなど、発言したい全員にその機会が与えられたわけではありません。優先整備路線に反対の立場の参加者の発言がほとんどでしたが、推進の立場で発言する方もいました(運転免許試験場に行くのに便利になる、災害時の物資を運ぶために必要など)。発言を希望しても出来なかった方は、配布された意見・質問シートに書き込んで提出してほしい、との運営でしたが、それで相互理解が進むとは思えません。運営については司会のファシリテーション含め、課題があると感じました。

市施行路線選定についての説明と、市長の政策的判断についての説明を同時に行うことは、時間的にも議事整理的にも無理があるとの意見は議会でも出ていました。都市計画道路の検証については、建設環境委員であっても理解するまでに時間がかかるほど複雑であり、市民が深く理解するのに時間を要します。市長に対しては、感情的に意見をぶつけたい市民の思いが未消化となり、不満が残る結果となってしまいました。

それで結局、道路はどうなるの?

1次検証は定量的な評価で、ランクづけもあり評価指標の妥当性への疑問はさておき、視覚的に分かりやすく示されています。しかし2次検証の結果は定性的な評価として文章で示されており、結論が分かりづらいものになっています。市は検証のまとめについて、「あくまでも基礎資料。これを元に総合的に判断する」と答弁しています。

総合的判断。それはいつ? どういうプロセスで結論を導くのか?

必要性についての検証を踏まえながら、合理性(自然環境やコミュニティへの影響など、1次検証に入っていない項目)の検証について、専門家の知見も入れて市民参加で議論するプロセスが必要不可欠です。しかし、次期事業化計画の個別路線は、10月上旬にも選定する必要があると答弁しています。時間的余裕はありません。

市長は第3定例会(91日〜107日予定)のどこかで今後の対応について説明するとしていますが、それまで何をどうやって進めるのか一切説明がなく、どんな結論が出せるのか大きな疑問です。市長報告を撤回したのは317日。6ヶ月間もの空白期間です。市長が腹を決められない間にも、東京都は小金井3・4・11号線の概略設計の発注をするなど、着々と事業化に向けた準備を進めています。

5回にわたる説明会に参加しての実感は、「客観性、透明性及び公平性を確保」したとする検証について、市民の理解を得るには程遠い状態だということです。優先整備2路線に関して、白井市長には最低でも、市民の理解が得られない道路整備は認められない、と早急に東京都に申し入れていただきたい。

説明会の議事録と、提出された「意見・質問用紙」は出来る限り早期に取りまとめて回答するとのことです
小金井市の都市計画道路に関する情報は、市ホームページにまとめられています

※会場の様子の写真は、はけの自然と文化をまもる会のブログからお借りしました